ガニーGanni

ファッション

Ganni(ガニー)は、デンマーク・コペンハーゲンを拠点とする、世界的に人気を集めるコンテンポラリー・ファッションブランドです。クリエイティブディレクターのディッテ・レフストラップ(Ditte Reffstrup)と、夫でありCEOのニコライ・レフストラップ(Nicolaj Reffstrup)夫妻によって率いられ、そのプレイフルでエフォートレス、かつ個性的なデザインで、ファッション感度の高い層から絶大な支持を得ています。

1. ブランドの誕生と進化

Ganniの起源は2000年に遡ります。当初はコペンハーゲンの小さなギャラリーオーナーがカシミアウェアに特化したブランドとしてスタートしました。しかし、ブランドが現在の形へと大きく飛躍したのは、2009年にレフストラップ夫妻が経営権を取得してからです。

ディッテは自身のファッションに対する考え方、つまり「自分が着たいと思う服、着ていてハッピーになれる服」を軸に、ブランドのクリエイティブな方向性を刷新。ニコライはビジネス戦略と、特にブランドの重要な柱となるサステナビリティ(持続可能性)への取り組みを主導しました。

彼らが目指したのは、当時主流だったスカンジナビアン・ミニマリズム(シンプルでミニマルなスタイル)とは一線を画す、よりカラフルで、遊び心があり、着る人の個性を引き出すようなファッションでした。コペンハーゲンの女性たちの、気負わないけれどスタイリッシュな着こなしからインスピレーションを得て、「スカンディ 2.0(Scandi 2.0)」とも称される新しいスタイルを確立しました。

2. Ganniのスタイルとデザインの特徴

Ganniのデザインは、以下の要素によって特徴づけられます。

コントラストの美学: フェミニンとマスキュリン、ヴィンテージとモダン、洗練とリラックス感など、相反する要素を大胆にミックスするのが得意です。例えば、ロマンティックな花柄のドレスにゴツめのブーツを合わせたり、フリルのブラウスにワークテイストのパンツを組み合わせたりするスタイルはGanniの象徴です。

大胆なプリントと色使い: レオパード、ゼブラ、チェック、そして多様なフローラルプリントはブランドのシグネチャーです。鮮やかな色彩も積極的に取り入れ、ポジティブでエネルギッシュな印象を与えます。

特徴的なディテール: 大きな襟(ピーターパンカラーやセーラーカラー)、ボリュームスリーブ、シャーリングやスモッキング加工、体にフィットするニットウェアなどが多く見られます。これらのディテールが、シンプルなアイテムにも個性を加えています。

エフォートレスで実用的: デザイン性が高い一方で、日常的に着やすく、動きやすい実用性も重視されています。ドレスにスニーカーやフラットシューズを合わせるスタイリング提案も多く、リアルクローズとしての側面も持ち合わせています。

アイコンアイテム: スマックドレス(シャーリングが施されたドレス)、チャンキーなカーディガンやセーター、グラフィックTシャツ、そして特に人気が高いのがウエスタンブーツやチャンキーソールのブーツです。これらのアイテムは、シーズンを超えて愛されています。

3. 「Ganni Girl」:ブランドが体現する女性像

Ganniは、特定の年齢層や体型に縛られず、「Ganni Girl」というマインドセットを持つ女性たちにアピールしています。Ganni Girlとは:

自信に満ち、自分らしいスタイルを楽しんでいる。

トレンドを意識しつつも、それに流されず、自分の個性を大切にする。

ファッションを通じて自己表現を楽しむ、ポジティブで遊び心のある人。

エフォートレス(頑張りすぎていない)でクールな魅力を持つ。

この「Ganni Girl」のコンセプトは、SNSを通じて世界中に広まり、多くのインフルエンサーやファッショニスタが自らをGanni Girlと称し、コミュニティ感を形成しています。

4. サステナビリティへの先進的な取り組み

Ganniは、ファッション業界におけるサステナビリティの課題に早くから向き合い、先進的な取り組みを行っていることでも高く評価されています。ブランドは「より責任ある(Responsible)選択をする」ことをコミットメントとして掲げています。

B Corp認証: 環境や社会への配慮に関する厳格な基準を満たした企業に与えられる「B Corp(Benefit Corporation)」認証を取得しています。

素材の選択: オーガニックコットン、リサイクルポリエステル、リサイクルウール、テンセル™リヨセルなど、環境負荷の低い素材の利用率を年々高めています。製品に使用されている認証済み素材の割合を公開するなど、透明性も重視しています。

サプライチェーンの透明性: 2020年には、サプライヤーリスト(一次・二次)を公開し、サプライチェーンにおける透明性の向上に努めています。

二酸化炭素排出量の削減: 科学的根拠に基づく目標(SBTi)を設定し、サプライチェーン全体での排出量削減に取り組んでいます。再生可能エネルギーへの移行なども進めています。

サーキュラリティ(循環性): 古着の回収・再販プラットフォーム「Ganni Repeat」を導入し、製品の寿命を延ばす取り組みを行っています。また、リペア(修繕)サービスの提供や、リサイクルに適したデザインの開発なども視野に入れています。

年次報告書: 毎年「Responsibility Report」を発行し、サステナビリティに関する目標、進捗状況、課題などを詳細に公開しています。完璧ではないことを認めつつ、継続的に改善していく姿勢を示しています。

ニコライ・レフストラップは、業界内でもサステナビリティに関する議論をリードする存在として知られており、Ganniの取り組みは他のブランドにも影響を与えています。

5. グローバルな人気と展開

Ganniはデンマーク国内だけでなく、ヨーロッパ、北米、アジアなど、世界中に多くのファンを持っています。

店舗展開: コペンハーゲン、ロンドン、パリ、ニューヨーク、ロサンゼルス、上海などに直営店を展開。

卸売: 世界中の主要な百貨店やセレクトショップ(Net-a-Porter, Matchesfashion, Selfridges, Nordstromなど)で取り扱われています。

オンライン: 公式オンラインストアを通じて、グローバルに製品を販売しています。

コラボレーション: New Balance(ニューバランス)やLevi’s(リーバイス)など、他のブランドとの話題性の高いコラボレーションも積極的に行い、新たなファン層を獲得しています。

価格帯は、いわゆる「アクセシブル・ラグジュアリー」または「コンテンポラリーブランド」に位置づけられます。ハイブランドよりは手が届きやすく、ファストファッションよりは高品質でデザイン性が高いというポジショニングが、幅広い層からの支持につながっています。

6. まとめ

Ganniは、単にトレンドを追うのではなく、着る人の個性と自信を引き出し、ファッションを楽しむ喜びを提供するブランドです。そのユニークでプレイフルなデザイン、エフォートレスな魅力、そして業界をリードするサステナビリティへの真摯な取り組みが融合し、現代を生きる多くの人々を惹きつけています。「スカンディ 2.0」という新しいスタイルを確立し、コペンハーゲンをファッションマップの重要な拠点へと押し上げた立役者の一つであり、今後もその動向から目が離せないブランドと言えるでしょう。